MBAシリーズ9: MBA卒業後の職業2(仕事内容)

この記事の筆者
・ 早稲田大学政治経済学部経済学科卒
・ 米国一流校にてMBA取得(専攻 Finance, トップ10%)

シリーズ8ではMBAで金融を専攻した卒業者が、一般に一体どのような職務に就くのか? 投資銀行マンがやる仕事にはどういったものがあるのか、をざっとご説明申し上げました。

このうち、一番就く割合の高い「M&Aアドバイザー」につき、私自身経験があることもあり職務内容や待遇等をもう少し詳しくご説明したいと存じます。

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M&Aアドバイザーのお仕事

「M&Aアドバイザー」とは何か? 総論を再掲します:

M&Aに際し買収側か売却側につき交渉面や価格など様々なアドバイスをします。第三者としてクライアントを擁護し、場合により代理で交渉するなど弁護士に似たところがあります。双方に別のアドバイザーが付き喧々諤々の交渉をすることもあります。

具体的な業務内容を簡単にご説明します:

営業資料の作成

クライアント側から依頼されてアドバイザーに就任する場合がほとんどですが、M&Aの需要喚起のためにアカウント営業部隊と協力して、「ピッチ」と呼ばれる営業資料・・・こんな企業があり、御社にシナジーがあると思われますので買収を検討しませんか? 等・・・を作る作業をよくやります。業務部隊なのでメインの仕事ではないはずですが、営業部隊がテクニカルなことをあまり知らない場合があり、よくやらされる割に合わない仕事です。

よほどの自発的ニーズが無いとM&Aのようなノルかソルか(投資資金が巨額)のリスキーなことは企業はやりませんので、ほとんど当たりません。あるいは顧客企業もバカではないのでそう簡単にはそそのかされません。でもキレイな資料を作るのに手間が掛かるのにかなりやらされます(泣)。

取引スキーム

M&Aを検討する、となった場合、どういうスキームが一番いいのか、法的(会社法的)側面も踏まえて顧客と一緒に検討します。例えばキャッシュにて一括で株式を買い取るのがいいのか、株式交換を併用するのがいいのか、等々です。M&Aアドバイザーのメインの仕事です。

バリュエーション

売買価値を算定する仕事です。単に当該株式の価値はおいくらが妥当か、というだけでなく「シナジー効果」をどう捉えるか、という抽象的で難しい側面もあります。かなり細かくやり、顧客へのヒアリングをしつつ、大量の財務資料を読み漁ってエクセルで数字を・・・時に徹夜しながら・・・チクチクやります。

何度も修正が入るため骨の折れる仕事ですが、投資銀行マンの一番メインとなる仕事です。ウォールストリートの高給・名誉に見られるように世上花形とされる職業ですが、これが主という点を考えると実体は案外地味です。

契約条件交渉・契約書作成支援

こちらもメインの仕事の一部となります。財務マンの割にかなり法務マンの側面があります。契約書の作成に関して最終的には弁護士を起用しますが、叩きを作るのは投資銀行マンの仕事です。どういう条件で、と交渉をまとめて一覧にして弁護士にこれで起草してくれと投げる感じです。

もちろん、一番もめるのは売買価格ですので、前項のバリュエーションと内容的にリンクしています。

デュー・ディリジェンス

「デュー・ディリジェンス」とは「買収前詳細調査」のことで、法務・会計税務の面で書類を調べ上げて何か買収対象に思いのほかの瑕疵がないか調べ上げます(万一あったら契約書でヘッジを入れます)。

実行するのはテクニカルなプロの法律事務所や会計事務所で、顧客に推薦して起用してもらいます。かなり短期間で集中してやりますが、これが顧客にとってまたお高く、紹介する(往々にして提携して仕事を融通し合っている)とM&Aアドバイザーだけでも高いのに、他のプロにもむしられる・・・という顔をされます。

このため、やるのはそういう本当の専門家ですが、M&Aアドバイザーは顧客を代表して手配・司会進行を手掛け、レポートをまとめたり解釈を手伝ったりもします。そういうプロは気位が高いため、間に立っての扱いも大変です。

実際の取引

契約が目出度く締結されディールがまとまったら、実際の手続きに入ります。これをやるのは顧客側ですが、疑問があったら法律書をめくったり登記先の役所に問い合わせたりして最後まで細かくサポートします。

ディールが終わったら高いフィーをふんだくって後はどうなろうと知らん・・・アドバイザー契約でそう銘打ってあります。最終判断はご自身の責任で、特にバリュエーションは参考ですので正しいとは限りません(それでプロだろうか、と私などは思いました)・・・で終りですが、一つの案件に最低半年、長いと交渉に手間取り数年も要する時があります。普段プレスリリースでM&Aについて見掛けるのはそういう血みどろの交渉の結果、氷山の一角だけです。


給与面

ウォールストリートの「平均」収入は4千万超とどこかの記事で見ました。虚業のくせにエリート面してふんだくりやがって、と責められるはずです。

さて、日本の証券会社勤務の場合、一般の企業より大変な分給与水準はやや高いですが、そこまでは行きません。外資の日本支社でも日本水準に合わせているため、日本の証券会社よりはやや高いですが飛びぬけて高いということもないようです。

そのようなアドバイザーの大まかなヒエラルキーとして:

アナリスト(ヒラ) → アソシエイト(主任) → バイス・プレジデント(課長) → ディレクター(部長)

とあり、MBA卒業者はアソシエイトから始まるのが普通です。左ほどスプレッドシートをいじくるデスクワークの率が高く、右ほど営業や交渉の割合が高くなります。

日本ではアソシエイトで基本年収4桁はまず行きませんが(外資でも)、毎日終電の地獄の超勤で年収1千万円近く、場合により1千万円を超えることがあります。

その後は実績次第で、外資ならバイス・プレジデントで数千万、ディレクターなら40台中盤で1億越えも可能です。但し脱落して行きますので(私がアソシエイトで脱落したように)そこまでたどり着けるのはほんの一握りです。

まとめ

このように、花形と見なされているM&Aアドバイザーですが、かなり地味で毎日終電を覚悟しなければいけない激務です。一方で高い給料にありつける可能性はあります・・・最初のうちは時間を単に売っている感じですが。

MBAで金融専攻を考えられておられる方は、卒業後のこういう実体、メリット・デメリットを見越してから挑まれるようにして下さいませ。

次の記事がMBAシリーズ最終章になります。

MBAシリーズ10: MBA卒業後米国で就職(海外滞在)について解説します。

筆者のプロフィール
ナッシュ(仮名) 40歳台前半 / 男性

[学歴]

・早稲田大学政治経済学部経済学科卒
・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校 MBA(全米トップ50傑以内)
専攻: ファイナンス, トップ10%で卒業

[職歴]

・経理・IR畑を経て、投資銀行業務(M&Aアドバイザー)や財務系SEを経験
EQが低く人間関係が下手であまり大成しませんでしたが、数字いじりだけは得意でした。
・40歳にてフリーランスの産業翻訳家として独立
言語は英語・タイ語、主要対象分野は財務・法務系(アニュアルレポート・契約書等)
翻訳家になりたかった、というより通勤電車がイヤで無理に脱サラした感があります。

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