MBAシリーズ7: MBA二年次(専攻)

この記事の筆者
・ 早稲田大学政治経済学部経済学科卒
・ 米国一流校にてMBA取得(専攻 Finance, トップ10%)

シリーズ6では「MBAプログラムの様子(仕組み)」についてお伝え致しました。

MBAシリーズ2で、MBA取得後の典型的なキャリアを専攻により、

戦略系を専攻
●プロフェッショナル: 経営コンサルタント
●一般事業法人: 経営企画スタッフ

財務系を専攻
●プロフェッショナル: 投資銀行マン
●一般事業法人: 財務・IRスタッフ

と大別し、MBAの一年目で取る必修科目がそれぞれ戦プ / 戦事 / 財プ / 財事のキャリアに対しどれほど役に立つか、ざっくりご解説しました。職種により役に立つものもあまり役に立たないものもある、という結論です。

本稿をお読みになる前に、まだシリーズ2を読んでいない方はまずそちらをお目通し下さい。

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専攻

さて、一年次は全員が同じ科目を履修する「必修」ですが、二年次は自由に科目を選べます。「専攻」がどう決まるかというと、例えば最低8科目履修しなくてはならないとして、そのうち6科目は戦略・金融・ITといった専攻の分類に「属する」科目を登録しなくてはならない、という感じです(でもどれを選ぶかは全く自由です)。このため、戦略を専攻していても少し金融の科目を取ったりも出来ます。このように自ら指定した専攻によりある程度縛りはありますが、かなり自由にカスタマイズ出来る感じです。

まず卒業が第一なら、手強い科目より手に負える科目を中心に取る方が賢いかもしれませんね。

二年次の科目紹介(金融専攻)

また、シリーズ2と同じように二年次の科目をご紹介し、職種別に役に立つか否か〇・△・×で大まかに評価してみたいと思います。また単位の取りやすさのご参考に、手強さをA(手強い) / B(普通) / C(比較的ラク)で示してみたいと思います。

私は金融専攻でしたのでこちらしかご解説出来ず、評価も財プ / 財事に対してのみとなります。

なお、一年次はどのMBAプログラムでもかなり共通性がありますが、二年次についてはプログラム間でややばらつきがあると思われます。こちらは私の体験でご紹介するものですが、他のプログラムもそう大きくは変わらないだろうと思っています。

またいわゆる「会計学」と「ファイナンス」の境い目は不明瞭で、かなりオーバーラップしています(特にコーポレート・ファイナンス)。が、以下最初に挙げる科目以外はどちらかというとファイナンス寄りです。

財務諸表分析

一年次の会計学は会計・経理の仕組みを知ることが主な目的でしたが、こちらは分析が主体です。ケース・スタディも用いて、健全そうなバランス・シートに見えるが、このアセットは腐っており評価替えするとボロボロ・・・というような財務諸表をいじくって実態を見てみるというような演習を行います。
・財プ: 〇 これは投資銀行マンがよくやることです。
・財事: △ 出来て損はありません。なにより財務への理解が深まります。上からこのような作業を分析目的で命じられることもたまにあるかもしれません。
[手強さ: B / 会計学に相当通じていないとやや辛い]

コーポレート・ファイナンス(理論)

近代ファイナンス理論の基礎、MM理論(モディリアーニ・ミラー理論 / 資本構成は基本企業価値に影響しないはず、等)などを学び、ファイナンスの理論がそもそもどう構築されているか等を学びます。本来「裁定理論」と呼ばれる数理的な理論ですが、MBAレベルではあまり難しい数式は持ち出さないのが普通で、言いたいことはこうだよ、と理解出来ればOKです。
・財プ: △ 理論なので現場で使うものではありませんが、プロとして根本をわきまえておいて損はありません。
・財事: × 知らなくても仕事は出来ます。
[手強さ: C / 言ってることが分かればいいのでラク]

コーポレート・ファイナンス(実践)

1年次でやったDCF法他による株式価値評価を、もっと複雑で細かいケースでエクセルを用いてやったりします。
・財プ: 〇 まさに投資銀行マン、特にM&Aのアドバイザーが仕事でやることなので、演習として非常に役立ちます。
・財事: △ あまり仕事でやる機会はありませんが、知っておいて損ではありません。
[手強さ: C / 1年次でしっかりやっていれば少し細かくなるだけです]

投資理論

一年次では分散投資が何故リスクを軽減するか、という総論を学びました。二年次ではファンドの投資スタイルによるリスク・リターンの統計的な分析などを、実例を用いて行ったりします。例えばバリュー投資(割安株式) vs. グロース投資(成長株式)ではどちらが強いか、など(なおこれまでの結果では全体に前者に軍配が上がっています)。
・財プ: △ 証券アナリスト(セルサイド・バイサイドとも)にでもならない限り、一般の投資銀行マンにはあまり関係ありません。ただ、やはりその道のプロとして知っておいてもいいかと思います。
・財事: × 全く要りません。
[手強さ: B / ちょっと内容がオタク過ぎてとっつきが悪いところがあります]

フィックスド・インカム

国債や社債といったいわゆる「ボンド」の価格付け・分析を行います。「フィックスド・インカム」というのは利子・返済元本が決まっているためそういう名称になっています。
・財プ: △ ボンドを扱う部門もありますが、いわゆる投資銀行マンは株式周りですので、あまり使う機会はありません。が、知っておいて良いでしょう。
・財事: × 全く要りません。
[手強さ: A / かなり数理的で、イールドカーブなど専門的な概念も理解しづらいものがあります]

金融工学(イントロ)

金融市場の暴落を何度も引き起こした原因ではないか、とされている悪名高い分野です。私が見る所理論としては「中立的」で良いも悪いもなく、使い方・使う人が悪かったという方が正しいようです。よく世上で耳にするデリバティブ = 金融派生商品、典型的には「オプション」をどうプライシングするか、ということを中心に学びます。本来非常に数理的な分野ですが、樹形図のようなものを用いて算数レベルでプライシングする方法や乱数によるシミュレーションなども編み出されており、こちらを中心に学びます。
・財プ: △ いわゆる投資銀行マンは使わない内容ですが、これもある程度知っておくべきです。
・財事: × 全く要りません。
[手強さ: B / ある程度数理的ですが、文系でも手に負える程度です]

金融工学(ガチ)

上記の内容を、本式に微積分の数式がズラリと並ぶガチのそれでやります。頭がクラクラします。他の数理・コンピューター系の学部とシェアされていました(MBA以外の生徒も受講していました)。私は誤って手を出し、ギリギリパスしましたが危なかったです。
財プ: × いわゆるクオンツ・数理トレーダー等を志す人以外必要ありません。
財事: × 必要ないどころか、存在を知らない方が幸せです。
[手強さ: A / AどころかSにしたいぐらいで、理工系出身でないと歯が立ちません]


総括

他にも色々ありますが、主なものは以上のような感じです。一年次の科目でも役立つものとあまり役に立たないものがありましたが、二年次は深く突っ込むのでもっとそういった感があります。特に、財プは知っておいて損は無いぐらいですが、財事の場合もうここまでは要らん、という感じですね。一方「コーポレート・ファイナンス(実践)」はかなり役に立ち、私も卒業後投資銀行マンになってからそう感じました。

筆者のプロフィール
ナッシュ(仮名) 40歳台前半 / 男性

[学歴]

・早稲田大学政治経済学部経済学科卒
・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校 MBA(全米トップ50傑以内)
専攻: ファイナンス, トップ10%で卒業

[職歴]

・経理・IR畑を経て、投資銀行業務(M&Aアドバイザー)や財務系SEを経験
EQが低く人間関係が下手であまり大成しませんでしたが、数字いじりだけは得意でした。
・40歳にてフリーランスの産業翻訳家として独立
言語は英語・タイ語、主要対象分野は財務・法務系(アニュアルレポート・契約書等)
翻訳家になりたかった、というより通勤電車がイヤで無理に脱サラした感があります。

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