MBAシリーズ2: MBAで何を学ぶのか / 役に立つのか? (内容)

この記事の筆者
・ 早稲田大学政治経済学部経済学科卒
・ 米国一流校にてMBA取得(専攻 Finance, トップ10%)

今回の記事はMBAシリーズその2です。

1ではMBAの概要についてお伝え致しました。

シリーズ2では、「MBAで一体何を学ぶのか?」「どういうことに役に立つのか?」について具体的に解説していきます。

【スポンサーリンク】

MBAのメリット

復習となりますがMBAのメリットとしては大きく分けて、

  1. 履歴書効果
  2. 身に付く内容: 各種ビジネススキル + 英語力

の二つだと申し上げました。

転職・キャリアップという点では、正直前者の方が大切とも書きました。ただ、非常に高い学費を払い2年という膨大な時間を費やすため、内容面でも出来る限り多くを得たいものです。

ここで、MBAで学ぶ内容は(卒業後)実際に役に立つのか?

実践的なカリキュラムと言いながら、座学で本当にビジネスは学べるのか? という疑問はあるかと思います。

MBA卒業後の職業

ここで、MBA後に再就職する場合、

戦略系を専攻

●プロフェッショナル: 経営コンサルタント
●一般事業法人: 経営企画スタッフ

財務系を専攻

●プロフェッショナル: 投資銀行マン
●一般事業法人: 財務・IRスタッフ

というのが典型的なキャリアパスです。

以下、一年次で学ぶ各科目の概略をご紹介し、それぞれ上記の 戦プ / 戦事 / 財プ / 財事 キャリアに対しどれぐらい役に立つか、やや主観もありますが〇・△・×で評価してみます。

科目のご紹介

経営戦略

「ケーススタディ」と呼ばれ実際にあったビジネスの事例を論じて論理的な意思決定の方法を学んだり、「5フォース」(by マイケル・ポーター)と呼ばれる産業の魅力度を測るツールや、「SWOT」と呼ばれる事業の強み・弱みを測るツール等を実際の事例に適用して使い方を習得します。

戦プ: 〇 マッキンゼー等の経営コンサルティング・ファームでは実際にこれと似たようなことをやっているため、予習として非常に役に立ちます。

戦事: △ 一方これらは理論的過ぎることがあり、各事業法人にはそれぞれ事業・仕事のやり方があるため、外から仰々しくツールを持ち込んですぐ使えるわけではありません。が、場合により適用出来ることもあるでしょう。

財プ: △ 業務にこれらを直接使うことはありませんが、プロの「トーク」や資料の出だし・切り口に使うことがかなりあります。

財事: × 使いません。

マーケティング

消費者の購買動機や市場調査、プロファイリングといって「典型的なターゲット顧客」をモデル化する、といった演習を行います。心理学的な側面もかなりあります。

戦プ: 〇 経営戦略ほど使いませんが、マーケティング立案・調査に特化したかなり具体的なプロジェクト・・・例えばあるヘルスケア製品の宣伝・拡販施策等・・・の場合役に立ちます。

戦事: 〇 経営戦略と比べより具体的であり、純B2Bの戦プと違いいわゆる「客商売」であるため、知っていて役に立つことは多いでしょう。

財プ: × あまり使いません。

財事: × 使いません。

会計学1, 財務会計

いわゆる会計・経理で、財務系でなくとも経営者は財務諸表の読み方をわきまえていなくてはならない、という観点から必修になっています。P/LとB/Sの関係、その見方から財務数値の比による分析方法などを学習します。

戦プ: △ 経営コンサルタントは事業計画の作成・利益予測などかなり数値もいじりますので、最低限知っておく必要があります。

戦事: △ 上記と同様です。

財プ: 〇 投資銀行業務(M&AやIPO)は下記のいわゆるファイナンスよりも、スプレッドシートで事業計画をいじることが主要業務のため会計学の方が実は大切です。

財事: 〇 本業です。

会計学2, 管理会計

上記の財務会計は投資家への報告が主要な目的であるため、国毎にある程度作成ルールが決まっています。一方、こちらは財務会計ベースのものを修正して、内部で各事業の収益性を比較する場合等に用いる手法です。

例を挙げますと、事業AとBがあり売上比は2:3だったとします。財務会計ベースではビルの「賃料」を売上比でチャージ = 2:3と決まっているとします。

一方で、実情AもBも占有しているフロアの面積は同じぐらいだとすると、内部では1:1にしてチャージし、実際の収益性を見てみる、というような感じです。

戦プ: 〇 色々な角度から収益性を分析したりするので、大切な考え方となってきます。

戦事: △ プロフェッショナルほどではありませんがほぼ同様のことが言え、時に使うこともあるでしょう。

財プ: 〇 やはりスプレッドシートをいじって色々な角度から分析を行うことがあります。

財事: △ どちらかというと財務諸表・アニュアルレポート等を「正確に作る」方がメインですので財務会計の方が大切なのですが、時に経営層からそのような分析を依頼されることもあります。

ファイナンス1, 企業ファイナンス

「DCF」(Discounted Cash Flow)法と呼ばれるメソッドを用い、事業から生まれる将来の予想余剰利益を現在の価値に引き直し、その価値(株価)を推定するというような数字まみれの演習を、エクセルを用いてやります。

戦プ: △ 実際に使うこともかなりあるかと思います。

戦事: △ あまり使いませんが、最低概念としてはわきまえておくべきです。

財プ: 〇 まさにこれが仕事です。ほとんどこればかりやっています。

財事: △ あまり使いませんが、言われたら出来るようにしておくべきです。また、IR畑ですとお相手する証券アナリスト(セルサイド・アナリスト)がこれをやっていますので、向こうが何をしているかわきまえておくべきです。

ファイナンス2, 市場・投資

ファイナンス1が個社に対するものなのに対し、こちらは証券市場全般にまつわるものです。いかに「分散」投資をしてリスクを減らすか、ということを学びます。

戦プ: × 要りません。知っていて損はないと思いますが。

戦事: × 使いません。

財プ: △ 思ったほど必要ありません。これが必要なのは「ファンド」で働く人(バイサイド・アナリスト)です。が、よく使うファイナンス1の根拠(市場全体と個社の関係)になっている部分もあるので、知識としては必須です。

財事: × 知らなくても仕事には困りません。

経済学

バックグラウンドとして、いわゆるマクロ・ミクロ経済を学びます。

戦プ: × 経済・産業全体の分析から話を起すこともあるため、ある程度知っているべきですが・・・理論的過ぎるため正直無意味な学習という感じです。

戦事: × 全く使いません。

財プ: × やはり要りません。財務のプロとして一般教養としてわきまえておくべき、ぐらいです。一方、エコノミストや市場全体を分析するストラテジスト、といった職業の場合必須です。

財事: 全く使いません。

統計学

市場分析等に使う必要があるから、という理由で必修になっています。エクセルの統計ツールを使って行いますが、数理的な表現が出て来て一番厄介な科目です。MBA留学前に予習をしておくべき科目としてはまずコレです。

戦プ: △ 統計的な分析をする場合もあるかと思います。

戦事: × 実際に使っている話はあまり聞きません。

財プ: × 使いません。ファイナンスの理論がかなり統計学に根ざしているという点を考えると、バックグラウンドとしてある程度知っておくべき、ということはあります。

財事: × 全く使いません。数字に強くて損ではありませんが・・・。

オペレーション

統計学の応用で、製造業・工場の効率的運営方法や品質管理について学びます。かなり数理的で、こちらもかなり厄介な科目です。

戦プ: × 工場の運営改善等特殊なプロジェクトで使う場合も考えられますが、あまり使いません。

戦事: × ガチ製造業で要る場合も考えられますが、基本使いません。

財プ: × 全く使いません。

財事: × 工業簿記系で分析を命じられる場合も皆無ではないでしょうが、基本使いません。

ビジネス・ロー

事業運営にどう法律(会社法等)が影響するか、主にケーススタディを用いて、特に解釈が多様なケースを論じたりします。

法律関係ながら条文の解釈をメインとする法学部の講義とはかなり肌合いが違い、実践的です。

最近の日産のケースなどがこの授業で今後扱われそうですね。

戦プ: × あまり使いません。

戦事: × やはりあまり必要ありません。

財プ: △ 投資銀行マンは契約交渉などかなりリーガル面の仕事もありますので、直接役に立たなくてもセンスを磨いておくという点ではいいかもしれません。

財事: × 財務畑は法律も密接に関わっておりかなり触れる機会がありますが、こういう観点の内容はあまり要りません(普通の解釈と適用のみです)。

組織論・リーダーシップ

組織の力学とは、権力とは、リーダーシップ・モチベーションとは、というやや抽象的な内容を学びます。

特にビジネスリーダーを育成することを主眼としているMBAプログラムでは「リーダーシップ」ということがうるさく語られます。

個人の資質による面も大きいので、書物で学んでどうということも無いのではと個人的に思うのですが・・・。

戦プ: 〇 企業のミッションやビジョンといった広くリーダーシップにまつわる事柄をコンサルして制定するのはメインの仕事の一つであり、このような抽象的思考力と観念をまとめる力は大切となってきます。

戦事: △ 組織設計が重要な仕事の一つになってくるため、学んでおいて損はないでしょう。

財プ: △ 事業再編や買収等の際にトップ人事の話がかなり重要になったりするため、知っておいて損ではありません。

財事: × 使いません。

コミュニケーション

効率的なプレゼンテーションの方法・PPTの作り方等を実際の演習を通じて学びます。

戦プ: 〇 クライアントへのプレゼン・資料作りがまさに仕事ですので、とても大切です。

戦事: 〇 社内でのプレゼン、特に経営者へのプレゼンの機会も多いでしょう。資料作りが普段の仕事です。

財プ: △ 戦プほどではありませんが、クライアントへプレゼンする機会もかなりあります(特に新規案件の提案の際)。分かり易い資料を作る能力も重要になってきます。

財事: あまり必要ありません。

以上が一年次に全員履修する科目の主なものですが、専攻の二年次では戦略系なら「経営戦略」・「マーケティング」を、財務系なら「会計学」・「ファイナンス」を、基本の内容は同じですがさらに深く追求することになります。


まとめ

このように、幅広い科目を「詰め込まれる」ことになりますが、見てきた通りその後のキャリアによってかなり使うものとあまり使わないものがあり、全てが役に立つということではありません

もちろん、どの道に進むにしても全て知っておいて損ではありません。

MBA留学を検討する場合は、その後の希望するキャリアも想定して、果たして内容面でも意味があるか・「ペイ」するかじっくり考えるようにして下さい。とにかく学費がべらぼうに高いので・・・。

次の記事では、MBAシリーズ3: MBAへの出願には何が必要か? (準備)について解説していきます。

筆者のプロフィール
ナッシュ(仮名) 40歳台前半 / 男性

[学歴] ・早稲田大学政治経済学部経済学科卒
・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校 MBA(全米トップ50傑以内)
専攻: ファイナンス, トップ10%で卒業

[職歴] ・経理・IR畑を経て、投資銀行業務(M&Aアドバイザー)や財務系SEを経験
EQが低く人間関係が下手であまり大成しませんでしたが、数字いじりだけは得意でした。
・40歳にてフリーランスの産業翻訳家として独立
言語は英語・タイ語、主要対象分野は財務・法務系(アニュアルレポート・契約書等)
翻訳家になりたかった、というより通勤電車がイヤで無理に脱サラした感があります。
スポンサーリンク
スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

four × 3 =