MBAを取得したエリートの転職地獄 その5: サラリーマン人生決着

この記事の筆者
< 学歴・資格等 >
・ 早稲田大学政治経済学部経済学科卒
・ 米国一流校にてMBA取得(専攻 Finance, トップ10%)
・ 留学前、TOEFLで満点(スコア自体は失効しています)
・ CFA, Chartered Financial Analyst, CFA協会認定証券アナリスト
・ 日本証券アナリスト協会検定会員

< 職歴概要 >
・大手サービスで経営管理、経理(連結決算)、IR(Annual Report作成等)
・大手外資コンサルティングでM&Aのアドバイザリー(クロスボーダー含む)
・大手メーカーでM&Aの企画推進、経営管理
・大手ITで会計ソフト等の企画開発、海外製品のマニュアル翻訳、トップ通訳

本シリーズの前半では私がいかに虚栄心から投資銀行マンを志し、MBAまで取得して勝ち得た一回目の転職先 = 監査法人系財務コンサルティング会社ではある程度成功しましたが、段々と激務のストレスからノイローゼになって行ったお話、苦しみから目をそむけるために証券会社に転職したらもっとひどい目に合ったことを語りました。

本シリーズの前稿、その4では:
●イヤになったら転職、ということが癖になり再度転職活動に乗り出しましたが、年で転職回数が多いともありそう簡単には引っ掛かりません。
●ところがたまたまM&A経験者を探していたとあるメーカーが給与・肩書ともかなりの条件で拾ってくれて気分を良くします。
●懲りずにまた自信過剰になり過ぎて上司と喧嘩し、干されます。
●再度アル中になり産業医に精神疾患と診断されて長期欠勤を余儀なくされました。

こうして同じパターンを繰り返す「転職地獄」にはまり、再度長期のオフ中に転職活動に手を染めます。4回目ですのでこうなると麻薬のようなものです。最後の本稿ではこの顛末につき述べさせて頂きます。

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さすがに無理、だが無理を押して・・・

前項でも書きました通り日本の企業はあまりに転職回数が多い人は怪しんで敬遠する傾向があり、この時点で30歳台後半に突入していたこともあり、優秀なリクルーターの力を借りても「全く」引っ掛かりません。奇跡も二度は無い、ということでしょう。

が、私には最後の切り札がありました。父が大手保険会社の役員で顔が利くため、取引先のメーカー系大手IT会社に相談してくれました。同社は得意先との良好な関係の維持という意図もあった一方、ドメスティックなためグローバルな方面(商品・市場)を模索しており、私がM&Aホルダーで聞いたところグローバル感があるため、喜んで採用してくれました。まぁいわゆる「コネ」です。40近いという年で情けない限りですが・・・。

また役職コンプレックス

そのメーカーグループは総合職9~1級という職制を設定しており、9~7が担当、6~5が主任(ここまでが超勤の付くスタッフで、以降が固定年年俸の管理職)、4~3が課長、それ以上が部長・役員という感じでした。私は総合職5級の主任(中でも上の方)採用で、残業抜きで600万円/年と給与面の待遇もまずまずで採用されました。残業を合わせると700を超えます。プロパーでも、同年代は総合職6から4ぐらいのレンジで私より低めの人も多くあり、中途としては条件のいいものです。これも「コネ」効果です。40近いという年で情けない限りですが・・・。

またこれで気分を良くし、いい気になりました。

消える営業マン

部署は営業系であり、職務としては半分お遊びSEのような感じでグローバル系の商品の開発にガチSEチームと協働して(顧客視点を生かし)取組み、一方で開発中のプロトタイプや出来た製品を主に新規顧客・・・海外ではありませんが外資などなるべくグローバルっぽい先に売り込む、というものでした。

学識・経験上財務系の知識があったため多言語会計システムなどの開発にそちらをヒントにして取組み、こちらには多少貢献しました。

一方で本業の営業マンとしては、アル中が治っておらず売り込みに出かけるフリをして昼キャバで飲んで酔っ払い、面倒になってオフィスに帰って来ないという「消える営業マン」化しておりました(笑)。会社にとっては笑いごとではありません。

そのうち、3年ほどごまかしながら過ごしていたのですが、さすがに一部の営業実績のある同年代は総合職4級の管理職に上がっていきます。一方私は消える営業マンですので評価も悪く、降格すら検討されているほどでした。

やがてその追い抜かれる感のせいでノイローゼが深まり、また産業医の診断で長期休暇となり・・・その間「また」少し転職活動をしてみましたが完全に無理で・・・再度出勤してもいつも遅刻・飲酒出勤でとがめられ懲戒解雇にはなりませんが自主退職を促され、事実上「クビ」になりました。

この時点で40歳の坂が見えており、正社員のリンクも切れ(それまで無職期間は1日もありませんでした)、日本の企業社会からついに締め出される羽目となりました。

これで、私のみじめな転職地獄記は終わりです。


教訓

一度転職地獄にはまりバーンアウトすると、心機一転と表面上自分に言い聞かせても病が心に巣喰っていて、年もあり何をやってももうやり直せない・立ち直れないということがあり得ます。キャリアアップということを名目にして転職をやたらと繰り返すことについては十分にご注意下さい。

その後

さていわゆる正社員での企業戦士の道は絶たれた私ですが、貯金もさほどなく何かをして食わなくてはなりません。

が、英会話学校の教師や派遣の事務なども受けたりしてみましたがそれすら受からず、結局契約社員で施設警備員として雇われました。超勤を入れても年収200万円台後半という待遇で、落ちれば落ちるもの・・・と思いました。そんな他に何も出来ない私のような失敗者が集まる底辺ですが、人間関係が職務柄薄いと思いきや同僚同志の陰口社会(クソミソ、あいつは太っていて警備員としてはまず見た目が悪い、等)で、私も気が利かないと悪口を若い人達に言われ続け、数ヵ月ですぐに投げ出します。気付いてみたら40歳の坂を越えていました。今まで何をしていたのだろう、と。

その後またプー状態でタウンワークなりを見ますが、いわゆるオフィスのサラリーマンスキル以外何もないのでバイトですら出来そうなことが何もありません。

そこでふと、学力だけは並み以上にあるので、大学時代も経験したことある塾はどや? と思い、学歴が良く学力試験を通れば、バイトでもありそこをクリアすれば面接・人間性など関係なく誰でも通るのである大手の個人指導塾にバイト講師として大学生に混じりながら受験中高生に英数国を教え始めることになりました。が、そのうち子供からチクリを受けたモンスター / 非モンスターペアレンツ達が私の教え方がいい加減だ、態度が悪いなどとマネージャーに電話でクレームを頻繁に寄越すようになり(自分ではそういう積もりは無かったのですが)、若い上司に怒られてイヤになり、これも数ヵ月でドロップアウト。正社員もダメ、契約社員でもダメ、バイトでもダメ、社会的に人間失格だ、と自嘲したものです。

しかし何かをして食わなくてはなりません。クレームが出始めた頃に、あるアメリカの心理学者の言葉に「人生は自分の非・勘違いに悟るまで違った形でレッスンを与え続けて来る」というものをふと思い出し、このような転職地獄を通じて私に与えられているレッスンは何か、と客観的に考えました。それは生まれつきEQが低く(IQはかなり高い方ですが)、人間関係や組織に向かない、努力しても改善出来ない、というものでした。

その後、ネット労働市場を通じて40歳台で翻訳家兼ライターでデビューを果たしました。こちらは職人的な仕事でただスキルが高ければこなせるので(最低限クライアントとのやりとりはありますが、それもビジネスライクであり)、即成功し、なお貧乏ながらクライアントの評価もうまい・速い・安いと非常に高く、妻子が無いのもあり自由な生活を送りつつ、リピーターも出て来て警備員時代ぐらいの最低の稼ぎは確保出来るようになりました。恐らく文系ワーカーの評価では全て満点、絶賛の嵐の私が日本で現在一番です。僕が実はスゴイと言っているわけでなく、何故比較的向いていることにもっと早く気付かなかったのか、いわゆる勤め人以外にも不安定ながら独立やフリーランスという選択肢があると思い付かなかったのか、「40年間何をしていたのか」という想いが胸に去来するだけです。

今は朝11時に起き、一日3~4時間ぐらい食うに必要なだけ最低限の仕事を孤独にやって、後はネットで格闘ゲームをして友人も無く引きこもりという気楽に生活をしていますが、出来れば一生続けたいです。

語学力という形で、仇をなしたMBAが変な恩返しをしてくれました。

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付記: 転職したくても出来ない人達2

同メーカーグループはかなりトラディショナルで、前世紀まではいわゆる年功序列で、誰でも勤めていれば総合職6級(主任)までは最低上がるというシステムでしたが、現在温情で雇用は保証するながら年功序列は廃止しており、50になっても総合職9級でヒラのまま、オフィスの片隅で純事務をひたすらこなし、毎日憂鬱そうな顔で通いながら特別なスキルもなくて転職などは出来ず、一方で食わせる妻子が居るためリスクをとって独立・フリーランスということも出来ず、ただ定年退職を都合何十年も待っているという男性をかなり見かけました。これも自身の問題ですが・・・。

総まとめ

本シリーズもこれを以てオワリとなります。皆さんのご参考・他山の石となりましたでしょうか? メッセージとしては転職にはご注意、というものです。以下箇条書きでポイントのみ再掲します:

●転職にはプロパーの特権を捨てる覚悟が必要です。
●仕事自体に意義を見い出すのでなく、カネや名誉といった虚栄心のみで転職するといつか必ずコケます。
●転職を繰り返すと癖になり、どこに行っても不満が募り転職のための転職をする羽目になりかねません。
●一方、サラリーマンだけが生計を立てる道でもありません。

ご清聴(読か)、真にありがとうございました!

筆者のプロフィール
ナッシュ(仮名) 40歳台前半 / 男性

[学歴]

・早稲田大学政治経済学部経済学科卒
・イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校 MBA(全米トップ50傑以内)
専攻: ファイナンス, トップ10%で卒業

[職歴]

・経理・IR畑を経て、投資銀行業務(M&Aアドバイザー)や財務系SEを経験
EQが低く人間関係が下手であまり大成しませんでしたが、数字いじりだけは得意でした。
・40歳にてフリーランスの産業翻訳家として独立
言語は英語・タイ語、主要対象分野は財務・法務系(アニュアルレポート・契約書等)
翻訳家になりたかった、というより通勤電車がイヤで無理に脱サラした感があります。

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